筆耕の仕事におすすめの本

僕が実際に愛用している筆耕のお仕事に役立つ本や辞書をご紹介します。筆耕で文字の間違いを出さない為、様々なシーンのマナーの確認など、これらの本は手放せません!

 

以下に紹介する本は、筆耕士や書道家などの書のプロは最低限必須の本です。どちらにしても筆耕の仕事をしているうちに必要になるでしょう。

 

賞状の書き方

 

筆耕のお仕事におすすめの本|筆耕の仕事を確実に遂行するために必要な本

前田 篤信 (著)

株式会社アテネ教育出版

賞状技法士講座-その書き方

 

市販で買える唯一の賞状技法の教科書です。賞状の書き方・細字の書き方・その他関連技法が解説されています。

 

著者は前田書風を確立した故前田篤信先生です。賞状に適した前田書風は、シャープさと柔らかさを両立した独特なフォルムを持ちます。この本は、前田書風の基本も解説付きで紹介されています。

 

賞状技法の他には、式辞、式次第、公文書、胸章等、筆耕の仕事に関連する技術を解説しています。巻末には賞状で良く使われる慣例語句集が毛筆で書かれて掲載されているので、お手本として使う事も出来ます。

 

この1冊があれば「すぐに賞状が書けるのか?」と言うと正直難しいです。しかし、賞状を書く為の勉強をするには、まず最初に読まなければいけない本です。筆耕の仕事に興味を持った方は見ておいた方が良いでしょう。

※新装版になっていますが内容は同じです。

漢字筆順ハンドブック

 

筆耕のお仕事におすすめの本|筆耕の仕事を確実に遂行するために必要な本

江守 賢治 (著)

正しくきれいな字を書くための「漢字筆順ハンドブック」

 

筆耕のお仕事で最も重要なのは、正しい文字を間違いなく書く事です。常用漢字を中心に、人名漢字、更には良く使われる旧字体や異字体も収録されています。

 

著者の故江守賢治先生は、文部省主任教科書調査官をなさるなど、書家としてだけでなく、漢字の研究や普及にも尽力されてきました。江守賢治先生の著書はたくさんありますが、どの本もとても分かりやすく勉強になる本です。ちなみに僕の先生の先生です。

 

筆耕のご依頼を頂いた際、曖昧な漢字はすぐに本書で調べるようにしています。特に人名は旧字体や特殊文字が多々あるので、とても助かっています。これからも長い付き合いになりそうな1冊です。

 

 

小学生用の漢字辞典

 

筆耕のお仕事におすすめの本|筆耕の仕事を確実に遂行するために必要な本

藤堂明保 編・深谷圭助 編集代表

例解学習漢字辞典 第八版 ドラえもん版

 

卒業証書の名入れのお仕事をするのなら、小学生用の漢字辞典を手元に置く事をおすすめします。特に書道にどっぷりとつかってきた方は、小学校で学ぶ漢字の字形に迷う可能性があるので、あえて小学生用の漢字辞典を持っているべきだと思います。

 

実は、小学生用の漢字辞典を手元に置くようになったのは、僕自身の失敗が原因でした。筆耕の仕事を始めて、初の卒業証書の季節を迎えました。都内の小学校から卒業証書の名入れのご依頼を頂いたのですが、150枚中20枚ほどのNGを頂いたのでした。

 

NGを頂いたのは「木へん」「糸へん」「禾へん」「森」「林」「幸」「羽」などです。これらの文字を見て、ピンと来ませんか?誤字ではないのですが、小学校ではNGとなる事があるのです。

 

この教訓があり、小学生用の漢字辞典を手元に置くようにしました。卒業証書の名入れのお仕事をするのなら、是非手元に1冊、小学生用の漢字辞典を置く事をおすすめします。

 

 

冠婚葬祭マナー辞典

 

筆耕のお仕事におすすめの本|筆耕の仕事を確実に遂行するために必要な本

学研ライフ&フーズ編集室 (編集)

冠婚葬祭マナー大事典 (学研実用BEST暮らしのきほんBOOKS)

 

筆耕の仕事は冠婚葬祭関連がとても多く、それぞれの知識は必須になります。とはいっても完璧に覚えることは困難なので、冠婚葬祭マナー辞典を手元に置いています。小さな事柄でも調べられるので重宝しています。

 

内容は冠婚葬祭を幅広くカバーしています。訪問、おもてなし、テーブル、贈り物、手紙、等の一般生活でのマナー。結婚式では、招待客、仲人、両家、主催者それぞれのマナーや準備について。子供の祝い事、様々な記念日のマナーについて。年間行事や祭りについて。そしてお葬式では、弔問者、喪家、それぞれのマナーや準備、また各宗教宗派のマナーや準備について。冠婚葬祭の様々なシーンに遭っても慌てずに対応できるように解説されています。

 

冠婚葬祭の筆耕と言うと、まずは祝儀袋・不祝儀袋があります。また、祝辞・弔辞などの式辞を書く事もあるでしょう。これらのご依頼を頂いたときに、適切に表題や名前、必要であれば連名を書かなくてはいけません。ご依頼主に質問されるときもあります。やっぱり冠婚葬祭マナー辞典は必需品ですね。

 

 

ペン字常用漢字の楷行草

 

筆耕のお仕事におすすめの本|筆耕の仕事を確実に遂行するために必要な本

江守 賢治 (著)

ペン字常用漢字の楷行草

 

内容は、漢字1文字に対して、5種類の書き方を掲載しています。5種類とは【楷書】【行書①】【行書②】【草書①】【草書②】と言った感じです。楷書から草書②まで、段階を踏んで崩していっています。段階を踏んでいる事で、どのようにして崩しているかを理解する事ができます。さらに、『ペン字』というのがポイントで、毛筆で書かれていると、筆順等が分かりにくい事がありますが、ペン字なので筆の流れがハッキリと解ります。

 

また、楷書体でも書写体や書斜体に近い文字も掲載されていて、注意書きも多く掲載されているので、漢字の知識を深めるためにとても有益です。旧字体の注意書きも多く掲載されているので、楷書体と、旧字から来る行書の違いの意味が解ります。

 

本書は、筆耕の仕事を行う上で、絶対に必要な本ではありません。僕自身の経験では、行書の依頼は年に数件程度です。しかし、漢字の知識を深めるためにはとても有益な本です。漢字の知識は筆耕士としての質を向上させてくれることは間違いありません。そういった意味で、読み物としても1冊手元に置いておくと良いと思います。

 

 

五體字類

 

筆耕のお仕事におすすめの本|筆耕の仕事を確実に遂行するために必要な本

五體字類(ごたいじるい)

 

五體字類は、古典で使われている文字を集めた辞典です。一つの文字を漢字辞典と同じように調べると、王羲之・王献之・唐太宗・欧陽詢・虞世南・チョ遂良・米フツ・王鐸・文徴明・・・二王や唐代四大家をはじめ、民や清の書家の書きぶりを調べることができます。

 

五體字類は書道の創作作品を作るときに必要になるので、書家であれば必ずと言っていいほど持っています。書道を長年やっている方ならすでにお持ちかもしれません。

 

賞状書きやあて名書きなど、筆耕の仕事は実用書道で書くので五體字類は無縁に感じるかもしれません。実際に、このサイト内でも『実用書道と芸術書道は別』と書いてきました。

 

しかし、筆耕の仕事の幅を広げ、お店や会社のロゴや、イベントの題字などの依頼が来た場合、普通の楷書や行書だけでは物足りなくなります。そんな創作書道の要素が必要になった時、五體字類が大活躍します。